今回は、調査ではなく、私の妄想を書き連ねてみたいと思います。
調査を期待して、このブログを読まれている方には、ごめんなさい。
私は、電子書籍専用端末として、Sony Readerを使っています。
専用端末のメリットは、E-inkの読みやすさ、スマートフォンに比べて画面が大きい一方、タブレットなどに比べた軽量であること、(Readerだけですが)物理ボタンがあることによる片手での使用しやすさ、あと、他の機能がないことで、読書に集中できること…などが上げられます。
ただ、そんな電子書籍端末が、昨今、調子が良くないという話が聞こえてきます。
電子書籍端末の売上が落ち込んで、タブレットにシフトしているという話です。
でも、個人的には、こういった現象は心配する必要はないと思っています。
なぜなら、電子書籍市場は、端末ではなく、電子書籍コンテンツで商売しています。
他の電機製品の場合、製品を売って商売をしているため、買い換えてもらえないと商売になりません。そのため、毎年、新製品を発売し、旧製品を陳腐化させてでも、製品売上を維持しなくてはいけません。そして、もし、売上が減ったら、それは一大事です。
それに対して、電子書籍端末は、普及率が一定数あれば、電子書籍コンテンツの販売で儲けられるため、無理して、新製品を売る必要はありません。赤字で売っている場合もあるため、むしろ、買い換えずに、同じものを長く使ってもらった方が良いはずです。
ということで、他の電化製品のように、必ずしも、売上に一喜一憂する必要はないはずです。見るべきは、売上ではなく、普及率です。
その一方、みんながスマートフォンやタブレットで電子書籍を読むようになり、あまりにも、普及率が減りすぎると、専用端末を売る意義がなくなってしまうかもしれません。
そうなると、便利な電子書籍端末が販売されなくなってしまいます。それは、私としては、非常に困ります。
そのためには、魅力的な新製品が出る必要があります。
とはいえ、スペックも横並びになり、次の新製品に載せるような技術も…と思って、いろいろ見ていたところ、おもしろいものを見つけました。
というわけで、その「おもしろいもの」=NFCが、電子書籍端末に載ることで、何が起こるかを妄想してみました。
もし、興味があったら、おつきあいいただけると幸いです。
概説:NFCとは
専門ではないので、間違っているところもあるかも知れませんが、NFCについて、簡単に説明します。
NFCとは、一口に言うと、「タッチで情報をやりとりするための規格」です。
日本では、Suicaのようにタッチ式のプリペイドカードシステムがあります。また、携帯電話の「おサイフケータイ」もあります。この技術を、より汎用的にしたものがNFCです。
端的に言うと、「タッチすると、何かが起こる」というものです。その「何か」がどのような出来事かは、メーカーに任されています。
具体的な応用例としては、このページ(週刊スタパトロニクスmobile)などに載っています。
また、家電に応用した製品が、パナソニックなどから出ています。
一例として、NFC対応の無線スピーカーがあります。
スマートフォンだけで音楽を聴く場合、家の外ではイヤフォンで聴いて、家に帰ってきたらスピーカーで聴くかと思います。
かといって、スピーカーとスマートフォンをケーブルでつないでしまったら、スマートフォンとしての役割が果たせません。無線で使えると嬉しいです。でも、無線は、設定がめんどくさいです。家に帰って来たら、スマートフォンの画面でチマチマ設定をいじらなくてはいけません。
そこで!
NFC搭載のスマートフォン&無線スピーカーなら、帰ってきて、スピーカーにタッチするだけで、音楽がスピーカーから鳴り始めます。
これ、実際にやってみると、非常におもしろいです。
このように、「タッチをきっかけにして何かが動き出す」というのがNFCの特徴で、「タッチ」という物理的な動作をキーにしているために、非常にわかりやすいというメリットがあります。
NFCは、AndroidではVer4.0から標準対応しており、スマートフォン・タブレットには徐々に普及しています。たとえば、先日、発表されたドコモの新機種(2013年春モデル)では8機種中5機種に搭載されています。
iPhoneについては、昨年のiPhone5で搭載されるという噂がありましたが、結局、搭載されていませんでした。次機種で載るかが注目されます。
現在、ソニーが、今、このNFCに非常に力を入れています。
上で紹介したスピーカーもソニーのモノですし、スマートフォンやタブレットにも必ず載せてきています。そこには、それなりの大人の事情もありますが、それは置いておいて…。
そんなソニーなので、Readerの次機種(次々機種?)にも載せてくる可能性は高いと思われます。もちろん、端末の魅力が増すのであれば、KindleやKoboなど、他の電子書籍端末に載る可能性も高いでしょう。
では、そんなNFCが、電子書籍端末に搭載されたら、どんなことができるか…ちょっと妄想してみました。
使用例その1:読書履歴の同期
現在の電子書籍ストアでは、マルチ端末対応が当たり前になっています。
専用端末の他に、android、iOSの対応は当たり前、同じ書籍をスマートフォンやタブレットでも読めるようになっています。
(ソニーも、早く、iOS対応して欲しいです。)
専用端末の他に、android、iOSの対応は当たり前、同じ書籍をスマートフォンやタブレットでも読めるようになっています。
(ソニーも、早く、iOS対応して欲しいです。)
そのため、「家ではPCや大画面タブレット、外ではスマートフォンや電子書籍端末」という使い分けも一般的になっています。
その場合、「外に出ても家で読んでいた続きが読める」、つまり、「どこまで読んだか」の同期が重要になります。
私が使っているReaderでも、現状、無線LAN経由で同期することが出来ますが、同期は一日に一回らしく、あまり、使い勝手がいいとは言えません。
Kindleにも、読書履歴の同期機能はあり、おそらくReaderよりは遙に出来がいいと思います。
でも、いずれにせよ、以下の問題からは逃げられません。
- 3Gモデル以外では、外出先など、無線LANのない環境では同期できない。
- 3Gモデルであっても、頻繁に同期すると、無線通信によって電池の消耗を招くので、電子書籍端末のメリットが損なわれる。
電池の消耗を考えると、自動で頻繁に同期するのはあまり現実的ではないかもしれません。むしろ、自動ではなく、手動で同期する形にして、「ユーザーが同期したいときに、簡単に同期できる」方が解決策としては「アリ」なのではないでしょうか。
そして、同時に、「どこでも同期できる」ことも重要になります。
そこで、NFCです。
NFCが搭載されれば、タッチを使って、同期のスイッチにすることが出来ます。
また、瞬時に一対一のペアリングが出来るので、無線LANがない外出中であってもファイルの転送が可能です。
たとえば、以下のようなことが出来ます。
- 家では画面の大きなタブレットで電子書籍を読んでいて、出かける寸前に、タブレットと電子書籍端末をタッチ! それだけで、電車の中では続きが読めます。
- 喫茶店で、タブレットで読んでいて、店を出る前に、タブレットと電子書籍端末をタッチ! 電車の中では…以下略
家でも外出先でも、いつでもどこでも簡単に同期できるというのは非常に大きなメリットではないでしょうか。
使用例その2:スマートフォンの外部ディスプレイとしての使用
Readerには、「Evernoteとの連携」という機能が付いています。
どういう機能かというと、PCなどで、WebページをEvernoteに取り込みます。すると、そのページが、Readerで読みやすい形になって、Readerに取り込まれます。(一日一回、深夜に自動同期されます。手動同期も可能)
私は、最近では、ネット上でちょっと長い文章を見ると、すぐ、Readerに取り込んで読むようになりました。ネットが普及し始めた頃、長めの文章は紙に印刷して読んでたんですが、そのころに戻った感じです。
正直、この機能のためだけでも9,800円で買う価値はあります。
(昔、ソニーはinfocarryという文書ビューワを出していました。それに近い感じかも知れません)
でも、この機能、PC→電子書籍端末よりも、スマートフォン→電子書籍端末の方が、便利だと思いませんか?
画面の小さなスマートフォンで読むより、一回り画面の大きな電子書籍端末の方が圧倒的に便利です。
…にもかかわらず、スマートフォンでネットを見るのは外出先。外出先には無線LANはない。テザリングとかすればいいけど、さすがにそこまで手間はかけたくない。
…ということで、「スマートフォンで見ていたページを、電子書籍端末の大画面で見たい」という望みはかないません。
そこで、NFCが搭載されていたらどうなるか。
- 該当するWebページを開いて、スマートフォンと電子書籍端末をタッチ! 電子書籍端末を見ると、取り込んだページが、電子書籍端末上で開いています。
スマートフォンであまり長い文章は読みたくないですし、タブレットも常に持ち歩くとは限りません。かといって、常に電子書籍端末でネットをするのは現実的ではありません。
でも、スマートフォンと電子書籍端末が緊密に連携すれば、「長くて、電子書籍で読みたいWebページに出くわしたときだけ、すぐ、電子書籍端末で読む」という形で使い分けるという形をとれます。
でも、スマートフォンと電子書籍端末が緊密に連携すれば、「長くて、電子書籍で読みたいWebページに出くわしたときだけ、すぐ、電子書籍端末で読む」という形で使い分けるという形をとれます。
これ、実現すれば、すごく便利だと思います。
スマートフォン向けの外部ディスプレイとして、新たな使用方法が見いだせるのではないかと思います。
使用例その3:音声再生機能の復活
これは、あまり可能性がなさそうな「大穴」です。
Kindleでは、前機種まではイヤフォン端子がついていました。音読機能などが付いており、それなりに有意義に使われていたようですが、現行機種PaperWhiteからは、イヤフォン端子が付かなくなりました。
Readerには、前機種PRS-T1まで、イヤフォン端子が付いていました。といっても、内部メモリなどに入れた音楽の再生ぐらいにしか使えなかったと思います。それが、こちらも、現行機種のPRS-T2では端子も音楽再生機能もなくなりました。
イヤフォン端子がなくなった理由の一つは、製品の薄型化の中で、必ず3.5mm+αの厚みを取られるイヤフォン端子が邪魔になったということが上げられると思います。
でも、NFC+Bluetoothのイヤフォンも出ていますから、NFC+Bluetoothが搭載されていれば、厚みの増加なしに音声再生機能を復活させることが出来ます。
その場合、タッチ一発で、簡単にイヤフォンを使うことができます。
電子書籍のメリットの一つに、音声読み上げの併用があげられ、これは、アクセシビリティ向上というメリットもありますし、また、英語学習などにも効果を発揮します。
このあたり、Kindleが復活させてくれると、おもしろいと思うのですが…。
このあたり、Kindleが復活させてくれると、おもしろいと思うのですが…。
使用例その4:書店店頭での電子書籍販売に活用
これは、音声機能とは逆の意味の「大穴」。
「ありえなさそうだけど、実現したらスゴい」というものです。
最近、書店の店頭で電子書籍を販売するという動きが始まっています。
この動きは、非常によくわかります。
電子書籍を買うようになって、改めて感じたのが、書店店頭の素晴らしさでした。
電子書籍を買うようになって、改めて感じたのが、書店店頭の素晴らしさでした。
正直、本を探すのであれば、電子書籍ストアよりも、書店店頭の方が、はるかに楽だし、楽しいです。
やはり、圧倒的に広い面積を使って陳列されているというメリットは非常に大きいです。ぶらぶら歩いて見るだけで、どんどんおもしろい本が見つかります。
また、中身の好きな場所を確認できるというのも大きいです。
このあたりは、どれだけ大画面のタブレットが出来ても、どれだけリコメンド機能が発達しても、書店から離れては生きられないのです。
その一方、現状の「店頭での電子書籍販売」には疑問があります。
現状の「店頭での販売」は、QRコードや番号を受け取り、それをスマートフォンなどに打ち込んで、無線LANでダウンロードするようです。でも、最終的に、無線LANで落とすなら、結局、二度手間になってしまいます。だったら、普通の書店内でスマートフォンをいじって買うのと何も変わりません。
また、操作の難しさから、機械に慣れない、単純に本を読みたい人を十分には取り込めないという問題もあります。
このへん、NFCを使うことで、もっと便利に、わかりやすくなるはずです。
…というわけで、私の考える「書店店頭での電子書籍販売の理想の姿」。
- 店頭にある本は一目で電子版の有無がわかるようになっている。
たとえば、本の帯に「この本、電子化されています!」と書かれている。 - 客は、書店の店頭で本を選んで、レジへ持っていく。
- その本を、レジで精算して、お金を払う。
(本自体は、レジの奥に回収) - 客は、店員の指示に従って、電子書籍端末で、そのへんの機械をタッチする。
- ふと気づくと、電子書籍端末に、いつの間にかデータがダウンロードされている。
正直、夢です。
ある意味、一番難しいのが、一番最初の「本の帯に電子化の有無が書かれている」ではないかと思います。
本屋の店員さんが、配信が始まるたびに帯を付け替えるわけです。絶対に無理です(※)。
このへん、当面は、たとえば、「そのへんの機械にバーコードを読ませると、電子化の有無が確認できる」とかでも代用できると思います。
もっと理想を言えば、全部の本が電子化されて、そんな区別が要らなくなってればいいんですが。
でも、あとはNFCが端末に載っかれば、出来そうです。
これ、どっかやってくれないでしょうか。
販売の形態として、非常にわかりやすいと思いますし、電子書籍と書店のメリットが合わさった、理想の形の一つではないかと思います。
なにより、ユーザーが難しいことを考えなくていいというのが、非常にいいのではないかと思います。
※:上でリンクした記事を読むと、スマートブックストアの説明に「電子書籍版のラベルが貼られた書籍」とあり、実現されているように見えるんですが、実際のところ、どうなんでしょうか。そもそも、書店店頭でのサービスが始まってるのかどうかすらわからないのですが…。
まとめ
以上のように、「電子書籍端末にNFCが載れば、電子書籍端末はもっと便利になる!」と力説してきたわけです。
「ほら、電子書籍端末の未来はまだまだ広がってるよ」と。
でも、ふと気がつくと、スマートフォンでも良い話になってしまったような(汗)。
「2.スマートフォン外部ディスプレイ」以外は、全部、スマートフォンでも出来ますね。
電子書籍端末&タブレットではなく、スマートフォン&タブレットでも読書履歴同期は便利そうですし、最後の店頭販売に至っては、電子書籍端末だけでは普及数が低くて商売が成り立たないでしょう。
上で述べた妄想と、実現可能性をまとめます。
- 同期機能
- これは、NFCを載せるなら、確実に実現すると思います。
- というか、これを載せないなら、NFCを載せる意味がないかと。
- スマートフォン外部ディスプレイ
- Readerでは、それなりに可能性があるかも知れません。
- Kindleは、あまり、こちらの方向は向いていないように見えます。
- ただ、専用端末の生きる道としてはありかと思います。
- 音声再生機能
- 一度、切る結論を出している以上、復活はないかな…と。
- あるとしてもKindleだけだと思います。
- 書店でのタッチ販売
- これは…夢の話だと思う一方、こういったことをしないと、「店頭での電子書籍販売」の成功はないとも思います。
- スマートフォンでもできると思うので、どこかやってくれないでしょうか。
以上、あくまでも夢の話。
参考文献:日経エレクトロニクス 2012年9月17日号 特集「NFCで開け!」など
【追記(2013/01/27 23:00ごろ)】
ネットを検索していたら、上で述べたのと同じ「書店店頭で、端末へNFCでデータ転送」というアイデアについての記述がありました。
書店はNFCをどう顧客サービスに組み込むべきか: 電子書籍リーダーの非接触通信
NFCを巡る状況は、1年前とはだいぶ変わっていると思います。スマートフォン・タブレットへの普及も進みました。1年前より、さらに、やる意義は増していると思います。
…ということで、どっかやってくれないでしょうか。
【追記(2013/01/27 23:00ごろ)】
ネットを検索していたら、上で述べたのと同じ「書店店頭で、端末へNFCでデータ転送」というアイデアについての記述がありました。
書店はNFCをどう顧客サービスに組み込むべきか: 電子書籍リーダーの非接触通信
そういった本屋があらゆる店舗にNFCユニットを設置し、電子書籍リーダーを持つ顧客が即座に本を購入し自分のデバイスに同期できるとしたらどれほど興味深いだろうか。1年ほど前の記事です。
NFCを巡る状況は、1年前とはだいぶ変わっていると思います。スマートフォン・タブレットへの普及も進みました。1年前より、さらに、やる意義は増していると思います。
…ということで、どっかやってくれないでしょうか。
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