2013年1月5日土曜日

電子書籍 各ストア 出版社別 冊数調査(2013/01/05) -&未来予想図-

 あけましておめでとうございます。
 本年もどうぞよろしくお願いします。

 2013年になりました。もし、2010年を「電子書籍元年」と呼ぶならば、今年は「電子書籍四年」ということになります。

 前回の「電子書籍元年」はソニーLiBRIeや松下Σbookが登場した2004年ですが、そのときの「電子書籍四年」2007年と、今の状況は雲泥の差ではないかと感じています。
 2007年年初には、Sony LiBRIeはすでにフェードアウト気味で、 この年の5月には生産が終了します。Σbookも、生産終了こそ翌年3月ですが、すでに存在感はありませんでした。
 実質的には「元年」だけで終わった過去の「電子書籍元年」と比べて、今回は、元年からの流れの中、電子書籍二年、電子書籍三年…と、確実に歩を進めてきているのが感じられます。
 これも、ひとつには、過去、数度の「電子書籍元年」を積み重ねて、 コンテンツの拡充が行われてきたためではないかと思います。

 さて、そんなわけで、電子書籍の現状を把握するために、1ヶ月に一度ペースでやっている定期調査です。
 が、今回は、2週間ほど前に「Koboの大量投入」と題して、報告をしました。なので、報告自体はほどほどに。ちょっとしたお遊びをつけてみました。

21社合計配信冊数の推移

  まずは、調査開始から2ヶ月間の21社合計配信数の推移から。


 KoboとKindleが、12月半ばに一気に増加したのは、先のエントリーで報告したとおりです。
 燃え尽き症候群というわけではないのでしょうが、2社とも、上昇速度が少し鈍っており、Koboにいたっては、配信冊数が減少してしまっています。
 Koboの減少については、中央公論新社とメディアファクトリーの配信数が減少したことは確認していますが、理由は不明です。中央公論新社は、急上昇したときに配信を開始した出版社なので、何か不備があったのかも知れません。
(急上昇前後での数字の変動、中央公論新社:12/16:0→12/22:1359→12/29:799。メディアファクトリー:12/16:1022→12/22 :1013→12/29:796)

 他のストアは、おおむね同じペースで上昇していますが、さすがに年末年始をはさんだ直近1週間の増加はわずかでした。

近似直線による未来予想図


 今回は、年頭らしく、少し、未来に向いたデータも出してみようと思います。
 …といっても、先のことはわからないので、お遊び程度の話として聞いて(?)ください。

 何をしたかというと、上のグラフの各直線を線形近似して、未来に向かって伸ばしてみました。それによって、今後の、各ストアの配信数が予言(?)できます。
 そこから、2つのことを確認してみました。

 まず気になるのが「後発のKindleやKoboが、先発ストア並みの配信数になるのはいつか」です。
 現在、先発組が一定のペースで冊数を増やす一方、後発組はそれを上回るペースで追い上げています。このままのペースが続けば、いつかは追いつくわけですが、それがいつか。
 ということで、グラフを見てみましょう。


  後発のKindle、Koboの線を少し太めにしてあります。
 グラフを見ると、今年2013年の夏、7月から8月ぐらいには、先発組のReader StoreやGALAPAGOS STOREを捉えそうな感じです。
 hontoを捉えるのはもう少し先になりそうですが、いずれにせよ、今年の後半には、先発のストアと並ぶ程度の配信数になっています。

 ただ、この予想は、あくまでも、今のペースが続いた場合の話です。 
 現在、後発組が追い上げているのは、先発組がデータ化をしたデータを流用しているなどの理由があります。そのため、 実際には、差が縮まれば縮まるほど、追い上げのペースは鈍化します。
 しかし、鈍化を考慮しても、おそらく、1年後、来年の正月には、上位集団と体感で差が出ない程度の配信数程度にはなっていると考えられます。

 今後の注目点は、配信数で追いつかれたときに、honto、Booklive!、Reader Store、GALAPAGOS STORE、紀伊國屋などの先発ストアが、どのような点で差別化をしていくかでしょうか。
 今年の後半は、そこが見所になるかも知れません。


 さて。さらに未来に目を向けてみましょう。
 電子書籍の究極的な目標の1つは「紙で買える本は電子書籍でも買える」という状況ではないかと考えます。
 厳密には少し違いますが、仮に「紙書籍と電子書籍で同じ販売数」を達成できたら、それに近い状況だと思います。
 そんな日は来るのか。来るとしたら、いつなのか。
 それを見るために、この直線をさらに伸ばしてみます。
 
 現在、これら21社の紙書籍販売数は、hontoの紙書籍販売で約20万冊、amazon.co.jp(新品のみ)で約16万冊です。
 したがって、この数字に追いつけば、「紙と同じ販売数が達成できた」ということになります。先ほどのグラフの直線を2020年まで伸ばして、それらの数字に達するのがいつかを見てみたいと思います。さすがにKindleやKoboが今の増加ペースを続けられるとは思えないので、今回は、先発ストアだけです。


 おおざっぱに見て、2010年代の後半ぐらいになるでしょうか。
 より詳しくは、hontoが16万冊に達するのは2016年7月、20万冊に達するのが2017年11月です。
 このグラフを見た範囲では、少なくとも2015年よりも早いということはなさそうです。理想的な「紙で買える本が電子書籍でも買える」という状態はまだ先のようです。

 ただ、この結果も、あくまでも、現在のペースが続いた場合の話で、あくまでも「お遊び」レベルのものです。
 実際には、様々な状況変化によって、電子化のスピードも変わるはずなので、もっと早くなることもあると思います。というか、早くなって欲しいと思います。
 それは、今後、継続的に観察していきたいと思います。

各ストア配信冊数の現状

では、通常のデータに戻って、現状把握と、1ヶ月間の増分の内訳です。


 各ストア配信数は目で見てわかるほどの大きな変化はありません。
 この一ヶ月の増加数では、先のエントリーで述べたように、Koboの増加が非常に大きく、次にKindleです。
 先月、もっとも増加数が多かったebookjapanは、増加のペースが鈍ってきたようです。

 その他のストアについては、今回は、小学館の増加が非常に大きかったのが特徴的で、それに、集英社が続いています。講談社は、先月とほぼ変わらず、順調に増えていますが、小学館と集英社がそれを上回っています。
 この一ヶ月では、白泉社のReader Storeでの配信開始もありました。一橋グループが、ここに来て、電子書籍配信に積極的になってきたのかも知れません。
 この勢いで、再ダウンロード期限の撤廃をしていただけると非常に嬉しいです。 >小学館&集英社さま

各ストア未配信出版社


 最後に、各ストアの未配信出版社状況です。
 未配信出版社は、これまで配信数調査と同じ21社の範囲内で調べてきましたが、スクリプトの使用で調査対象を広げるのが容易になったこと、多くの出版社のKindle、Koboへの配信開始で、21社の中での未配信出版社が減ったことなどから、今回から、調査対象を広げました。
 新たに調査対象に加えた出版社は以下の通りです。
【配信有無確認追加】
早川書房,筑摩書房,岩波書店,幻冬舎,朝日新聞出版,エンターブレイン,河出書房新社,東京創元社,扶桑社,二見書房,ハーレクイン,少年画報社,主婦の友社
以上を含めた未配信出版社は以下の通りです。
【各ストア未配信出版社(2012/01/05現在)】
Reader Store:筑摩書房
GALAPAGOS STORE:角川書店 富士見書房 アスキー・メディアワークス 筑摩書房 エンターブレイン
紀伊國屋:ソフトバンククリエイティブ
ebookjapan:光文社 ゴマブックス 新潮社 筑摩書房 (PHP研究所1 中央公論新社15 アスキー・メディアワークス25)
Kindle:徳間書店 白泉社 筑摩書房 岩波書店 河出書房新社 (祥伝社19 少年画報社21)
Kobo:徳間書店  光文社  新潮社 白泉社 筑摩書房 岩波書店 (東京創元社6)
Bookwalker:小学館 徳間書店 秋田書店 光文社 集英社 双葉社 学研 中央公論新社 PHP研究所 ゴマブックス 新潮社 文藝春秋 祥伝社 白泉社 NHK出版 早川書房,筑摩書房,岩波書店,幻冬舎,朝日新聞出版,河出書房新社,東京創元社,扶桑社,二見書房,少年画報社,主婦の友社(学研1)
※カッコ内は配信数が著しく少ないもの(30冊未満)を示した。

 今回、新たに調査対象にした出版社では、筑摩書房はhontoと紀伊國屋のみに配信しています。岩波はKindle、Koboに配信しておらず、河出書房新社はKindleに配信していません。エンターブレインがGALAPAGOS STOREに配信していないのは、角川グループ共通の方針のようです。

【配信開始(2012/12/07→2013/01/05)】
ReaderStore:白泉社(0→177)
ebookjapan:PHP研究所(0→1)
Kindle:秋田書店(0→424) 中央公論新社(0→799) (祥伝社(1→19))
Kobo:小学館(12→2458) 秋田書店(0→425) 双葉社(19→558) 中央公論新社(0→839)

 配信開始は、この1ヶ月間の配信開始を記しました。そのため、2週間前のエントリーと重複になっています。新規配信開始出版社については、2週間前からあまり冊数は増えていません。

まとめ

  • Kindle、Koboは大幅増のあとの小休止中。
  • 年末年始はどこの電子書籍ストアも休むっぽい。
  • 来年の後半には、Kindle、Koboも、先発組に遜色ない配信数までいきそう。
    そこからの差別化に注目!
  • 紙書籍販売数と電子書籍配信数が同程度になるのは2010年代後半か。
    もうちょっとペースが速まると嬉しい。
  • 小学館、集英社が大幅増。
  • 未配信確認対象の出版社を増やした。

以上。

【謝辞】
 Koboの出版社別蔵書数については、[帰ってきた] koboストアの品揃えを見守るページのデータを使用させていただいています。
 ありがとうございます。

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