2014年2月8日土曜日

Sonyの電子書籍・北米市場撤退を巡る状況のまとめ


 数日前に、電子書籍界隈に大きな(?)ニュースが飛び込んできました。
 ソニーが電子書籍販売について、北米市場から撤退するというニュースです。

 結構、話題になっているようですが、これ、ある意味では、そんなに大きなニュースじゃありません。

 なぜなら、去年の秋にはもう決まっていたことであり、その前から、ある程度は予想できていたことだからです。

昨年秋の電子書籍端末撤退

去年の9月、ソニーは、新製品PRS-T3(国内ではPRS-T3S)を出しました。
 しかし、このとき、アメリカ市場では発売しなかったのです。そして、翌10月には、前機種PRS-T2の販売も停止され、ソニーは、北米の電子書籍端末販売からは撤退しました。
 そのときは、「電子書籍コンテンツのスマートフォン/タブレット向け販売は継続する」という趣旨のリリースを出しています。
 …ただ、専用端末なしに、どうやってKindle、Nook、Koboなど専用端末を持つ競合他社と伍して戦っていくのか、常識的に考えれば、無理な話です。

 そして、数ヶ月後の今月7日、案の定、北米市場からの撤退が発表されました。
 タイミング的には、おそらく、PRS-T3を出さなかった頃からKoboと交渉を始めていたのではないかと思われます。

 おりしも、ソニーのPC事業の売却、テレビ事業の分社化というニュースの翌日というタイミングであり、大きく話題になりました。

ソニー電子書籍の米国におけるシェア



 では、そもそも、ソニーの北米における電子書籍事業はどのような状況だったのか。

 以前、年表を作ったことがありますが、ソニーは2006年に米国での電子書籍サービスを開始しています。AmazonがKindleを開始するのは2007年なので、それに1年先駆けていたことになります。

 では、そのソニーの米国市場での勢いはどのようなものだったのか。



 どちらの調査でも、米国市場は、Kindleが半分以上を占める独占状態となっており、その次にアップルやNOOKが続き、ソニーのシェアは数%以下だったという状況が見えます。
 この状況では「撤退もやむなし」という状況だったと言っても過言ではないでしょう。


 サービス開始で先行していたにも関わらず、この状態になった理由の一つは、端的に言えば「Kindleに対して後手に回った」ということではないかと思います。一例として、Kindleがサービス開始当初から3Gを搭載し、ネットワークでの書籍の購入に対応したのに対して、ソニーが電子書籍端末に無線機能を搭載したのは2年後の2009年で、それまではPCにUSBでつないで転送する方式でした。

では、日本は?


 現状、日本では、米国市場ほどは独占は進んでおらず、大手のストアがサービスを停止するような状態ではありません。圧倒的に見えるKindleですら、シェアは4割と、まだ完全勝利とは言えない状況です。

 よく「日本の電子書籍市場は、米国に比べて、5年遅れで物事が進んでいる」と言われます。5年後、日本でも独占・寡占が進み、大手のストアでもサービスを終了する事態になるかも知れません。
 そのとき、シェアを取っているのは、Kindleなのか、それとも、日本市場の独特さによって、別の電子書籍ストアが地位を築くのか。
 漫画の配信に強いebookjapan、書店店頭での端末販売を充実させつつあるBooklive、北米撤退で日本市場の特性に合わせた端末を作れるようになった(?)ソニー、球場に名を付け知名度を上げるであろうKobo、そして、雑誌に強く、また、名前からして日本市場の独自性を活かせそうなGALAPAGOS STORE etc...。
 各社それぞれに日本市場での強みはあり、単純にKindleの独り勝ちになるとは言い切れないと思います。

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