2014年1月2日木曜日

電子書籍ストアと紙書籍のランキング比較(2013年 年間ランキング)


 あけましておめでとうございます。
 本年もよろしくお願いします。

 今回は、昨年・2013年の各電子書籍ストアの年間ランキングを比較してみました。
 前回、1年前に比較したときは、電子書籍ストア同士の比較に重点を置きましたが、今回は、電子書籍ストア間の比較と共に、紙書籍との比較にも重点を置いてみました。

 なお、紙書籍のランキングは、オリコンによる「オリコン 年間"本"ランキング」を用いました。
 また、電子書籍ストアのランキングについては、各ストア発表のものを用いていますが、それぞれ微妙に条件が違うため、ある程度の操作を行っています。そのため、正確なランキングとは異なっている可能性があります。あくまでも、目安としてご覧ください。具体的な操作内容については、本エントリーの最後に記します。

書籍ランキング

 まず、コミック以外(以下、書籍)でのランキングです。
 オリコンのランキングは「総合」と「文庫」があり、「総合」には文庫が含まれていないため、BOOK 総合 TOP50文庫 総合 TOP50を合わせて「期間内推定売上部数」で再ソートしました。
 一番右の列は、紙書籍の電子化の有無で、ほぼ全てのストアで配信しているものを〇、まったく配信していなかったものを×、半分程度のストアで配信していたものを△としました。

 
紙書籍でのランキング上位の作品のうち、電子化されていたのは、池井戸潤氏の「半沢直樹」シリーズと阿川佐和子氏の「聞く力」、そして、全ストアでは展開されていませんでしたが、近藤誠氏の「医者に殺されない47の心得」でした。
 百田尚樹氏の「永遠の0」「海賊とよばれた男」、村上春樹氏「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」、 東野圭吾氏「真夏の方程式」「プラチナデータ」、湊かなえ氏「夜行観覧車」は、電子書籍では配信されていませんでした。

 電子書籍ストアでは「半沢直樹」シリーズが、上位を独占しました。honto、紀伊國屋書店、Kindle、Koboでは、1位~3位までを独占、ほぼ全てのストアで全3作が10位以内に入っています。(ebookjapanで「ロスジェネの逆襲」が入っていないのは、同作を出版しているダイヤモンド社の配信開始が11月末と遅かったためと思われます)
 同シリーズは、紙書籍でも上位に入っています。電子書籍では3作目の「ロスジェネの逆襲」が売れているのに対して、紙書籍では他の2作が売れているというのが面白い特徴です。

 ストアごとの特徴を箇条書きで記します。
  •  Booklive!は、前回のランキングについて「ライトノベルが5作品入っており、スマートフォン中心の客層を表している」との分析が運営側からあり、私がこの調査をするきっかけになりました。
     今回のランキングでは、10作品中ライトノベルレーベルの作品が3作品と、多少は減りましたが、ライトノベルが多めの傾向は変わっていません。他のストアとは顕著に差があります。
     ただし、Booklive!は、他のストアと違い、シリーズ単位で集計しているので、シリーズものが多いライトノベルが多めに出る可能性があること、また、他のストアで書籍ランキングにライトノベルが含まれていないストアがあることには留意が必要です。
  •  Reader Store・紀伊國屋・Koboの傾向が似通っているのは前回から続く傾向です。
     「空飛ぶ広報室」「清須会議」など、映像化で話題になった作品が多い傾向があります。
     「専用端末があるストアの特徴ではないか」と前回は書きましたが、Lideoを出して1年たったBooklive!がこちらに近づいてきているような、そうでないような…。
  •  ebookjapanは、前回は、コミック以外への本格参入直後だったので、実質、初めてのランキングになります。
     前回は時代小説が多く他のストアとは一線を画していましたが、一般書籍のラインナップが増えた今回は、その傾向はなくなりました。唯一残っているのは吉川英治の「三国志」でしょうか。
  •  最大手と言われるKindleですが、他のストアと、少し違う傾向を見せています。半沢直樹シリーズ以外は、健康・英語・文章などノウハウものが多いです。強いて言うと、一番傾向が近いのは紙書籍です。
     前回も、ビジネス書が多い傾向があり、他のストアとは客層が違うことが伺えます。おそらく、Kindleの方が、より多様な客層を取り込めているのではないでしょうか。


 このランキングを作品の軸で見てみます。
 2ストア以上でランクインした作品について、各作品のランクインストア数とその平均順位で並び替え、紙書籍のランキング(88位まで)を併記しました。
 

 上に書いたように、「半沢直樹」シリーズが圧倒しています。ほぼ全てのストアでランクインという状態です。
 次が、直木賞受賞の「ホテルローヤル」で、5ストアでランクインしています。同作は、紙書籍でも20位に入っています。
 その下は2ストアにランクインした作品がいくつか並んでいます。ロングセラーの「聞く力」や、映画化された「脳男」「清須会議」は紙書籍と電子書籍の双方でベストセラーになっています。
 「つい他人に自慢したくなる無敵の雑学」は、電子書籍でめだって売れています。330円という手ごろな価格が人気の秘密かも知れません。
 

コミックランキング

 続いて、コミックのランキングです。こちらもオリコンの紙書籍ランキングと比較してみました。
 なお、コミックでは、紙書籍ランキング10位の作品の全てが電子化されていたため、〇△×はつけてありません。

 まず、紙書籍のランキングを見ると、ジャンプ・サンデー・マガジンの3大週刊少年漫画雑誌の作品が大半を占めます。2位「進撃の巨人(別冊少年マガジン)」・10位「テラフォーマーズ(ミラクルジャンプ→週刊ヤングジャンプ)」以外の全作品が、3誌の作品でした。
 それに対して、電子書籍ではその傾向は弱まります。「宇宙兄弟(モーニング)」、「キングダム(週刊ヤングジャンプ)」など、青年誌系の作品が入っています。

 この傾向の理由として、一つは、電子書籍の方が、平均年齢が高いと考えられます。タブレット・専用端末などの機器や決済手段などの理由から、年齢層が高いほど容易に電子書籍を購入出来るため、青年誌連載作品など比重が増しているかと思います。
 もう一つの理由は、紙書籍のランキングでジャンプ5作品をランクインさせている集英社が、同日発売などを積極的に行っていないことが考えられます。ジャンプの作品は、基本的には、1巻(約3ヶ月)遅れで配信されることが多いようです。それに対して、電子書籍で多くの作品をランクインさせている講談社では、多くの作品で同日発売を積極的に行っています。その差が、ランキングにおいても現れているかも知れません。

 電子書籍では「進撃の巨人」が強く、全てのストアで1位になっています。これは、一つには、同作が、2013年に出た10~12巻の全てで紙との同日発売を実現していることが大きいです。紙書籍で1位だった「ONE PIECE」を逆転していますが、「ONE PIECE」は3ヶ月遅れでの発売が基本です。

 また、「キングダム」が多くのストアで上位に入っています。「キングダム」は、2013年4月に10巻までを期間限定で無料公開し、11巻以降が売れたことも話題になりました。出版社によるキャンペーンで、横断的に各ストアでの売上が増した例だと思います。

 ストアごとに特徴的な作品としては、KindleのKDP(Kindle Direct Publishing)で発行されている「限界集落(ギリギリ)温泉」や、ebookjapanで独占配信状態の「三国志(横山光輝)」が上げられます。
 逆方向の特徴としては、紀伊國屋では、「ONE PIECE」を含め、集英社の作品が一つもランクインしていません。集英社のコミックはSony Readerに対応していないのが理由の一つかも知れません。

 個人的にランキングで注目しているのは「君は淫らな僕の女王」です。年間ランキングではKindleでしかランクインしていませんが、週間などのランキングで、いくつかのストアで上位に入っているのを見かけました。前回は「ふたりエッチ」「ノ・ゾ・キ・ア・ナ」がランクインしていましたが、こういった本が入ってくるのは電子書籍のランキングの特徴かも知れません。
 
 
 コミックのランキングも作品別で見てみます。紙書籍(オリコン)の30位までの順位を横に並べます。

 
 作品別で見ると、コミックの方が、紙のランキングとの一致度が高いことがわかります。コミックの方が電子化率が高いというのが大きな理由だと思います。
 「進撃の巨人」の次に多くのストアでランクインした「宇宙兄弟」は、ダ・ヴィンチ電子ナビによる電子書籍アワード2013で1位と、「2012年に最も売れた電子書籍」ですが、その面目躍如といったところです。

 電子書籍では売れて、紙書籍でランクインしていない作品としては、「テルマエ・ロマエ」や「GANTZ」があります。少し前に映画化で話題になった作品が息が長く売れ続けているのが電子書籍の特徴ではないかと思います。

 「永遠の0」は、小説の方が電子化されていないので、その分、コミカライズ版が売れているのでしょうか。「間違って買った人がたくさんいた」という理由でないことを祈っておきます。

まとめ

  • 書籍の文庫も含めたランキングでは、紙書籍上位の多くが電子化されていない。
  • …とは言え、電子書籍と紙書籍のランキングを比較すること自体が、一年前には考えられなかったので、この一年での電子化の進み具合は目を見張るものがある。
  • 「半沢直樹」「進撃の巨人」が桁外れに強かった。
    紙のチャンピオンたる「ONE PIECE」が同日発売して、ガチンコで勝負したらどうなるのか、是非見てみたい。
  • 電子書籍「微エロ」枠は「ノ・ゾ・キ・ア・ナ」から「君は淫らな僕の女王」にうつったか。
  • ebookjapanユーザーは三国志が好き?

ランキングに加えた操作について

  • honto
    • 総合
    • コミック
    • 書籍ランキングは、総合ランキングからコミックを除外して作成。
    • コミックランキングはそのまま用いた。
  • Booklive!
    • 書籍
    • コミック
    • 両ランキングともそのまま用いた。
    • ただし、書籍ランキングはシリーズ合算であることに注意。
  • ReaderStore(Booklista)
    • 総合
    • コミック
    • 書籍ランキングは、総合ランキングからコミックを除外して作成。
    • コミックランキングで、カラー版・モノクロ版の双方がランクインしている場合は、上位のみを残した。
  • 紀伊國屋書店
    • 双方
    • 書籍ランキングは、上下巻がランクインしている場合は、上位のみを残した。
    • 書籍ランキングとは別にライトノベルランキングがあることに注意。
    • コミックは巻別のランキングであったため、上位のみを取った。
  • ebookjapan
    • 小説・文芸
    • コミック
    • 総合ランキング・書籍ランキングがなかったため、小説・文芸ランキングを用いた。
    • 別にライトノベルランキングがある。
    • コミックランキングについては、そのまま用いた。
    • 別に、少女コミックランキングがあることに注意。
  • Kindle
    • 総合
    • コミック
    • 書籍ランキングは、総合ランキングからコミックを除外して作成。
    • コミックランキングはそのまま用いた。
  • Kobo
    • 書籍
    • コミック
    • 書籍ランキングは、総合ランキングからコミックを除外して作成。
    • コミックランキングはそのまま用いた。
  • オリコン(紙書籍)
    • 書籍 
    • 文庫
    • コミック
    • 書籍ランキングは、書籍ランキングと文庫ランキングを「期間内推定売上部数」で再ソートして作成した。
    • コミックランキングは、そのまま用いた。

2 件のコメント:

  1. ローソンとHMVが提供していた電子書籍サービス(エルパカブックス)がサービス自体を終了すると、先日報道されましたね。今後は、過去に購入した書籍の閲覧もできなくなると。
    今後2~3年だけで淘汰がかなり進むでしょう

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    1. おっしゃるとおり、淘汰はかなり進みそうですね。
      エルパカブックスは全額をポイントで還元するという対応を取ってくれましたが、他のストアも、ユーザーの不利益にならないように軟着陸してくれることを祈るばかりです。

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